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  2000年09月01日発売

侵入者
いま〈生命〉はどこに?

ジャン=リュック・ナンシー 著
西谷 修 訳・編

四六判 上製カバー装  128頁
定価:本体1,800円+税
ISBN 4-7531-0213-0 C0101 
         「わたしの心臓がわたしにとってよそ者になっていた」
フランスの現代哲学の第一人者であるナンシーが、事故の心臓移植の体験を語る貴重な証言。他者の心臓で生きる哲学的省察。

この本は、著者が自らの心臓移植の体験に触れた、深い哲学的な洞察に富んだ本です。著者のジャン=リュック・ナンシーはヘーゲルやハイデガーを経て、フーコー、ドゥルーズ、デリダを引き継ぐ現代フランス哲学の第一人者です。そのナンシーが、10年前に心臓移植を受けたのはあまり多くの人には知られていない事実です。本書は、雑誌『デダル〔迷宮〕』の特集「外国人の到来」に寄せて初めて自らの心臓移植体験を綴った文章の翻訳です。
ここでは移植のみならず、その後に待ち受ける免疫抑制、ならび抑制剤に起因する癌に襲われたプロセスなどが淡々とした、しかしそれ故に重みのある文章で綴られています。さらに心臓移植という、いわば〈他者〉の心臓で生きていることの意味を求めて、「命」とは何か?〈他者〉を受け容れるとはどういうことか?〈わたし〉はどこへいくのか?といった問いを自ら引き受け、「分有」という、すぐれて今日的な哲学的概念を提唱する哲学者の、深い思索を伝えてくれます。
本書の訳者西谷修氏はナンシーと旧知の間柄で、ナンシーの受苦とそれを受け容れ柔軟な知性を熟知した訳文は、詩的ですらあります。翻訳に加えて、医療テクノロジーが過剰に歓迎されるとすれば、それは「人類の福祉」の名のもとに生と死との境界を取り払っていくことを意味し、人間は「人体」という部品あるいは資材とされ、そのことは部品化された「人間」のリサイクルの始まりではないか、という現代技術文明への深い疑念と、しかし信愛するナンシーは生きているという現実の間で葛藤する訳者の文章は、われわれが現代社会で生きるための「人間の条件」を考えるうえで深い洞察を与えてくれます。
今日、医療技術や遺伝技術の進展にはめざましいものがありますが、科学・技術の進展が人間の生きる条件をこえて、それ自体の論理と市場原理との安易な癒着を招く危惧を抱えています。困難な〈生〉の今日的状況を考察していくうえで、避けて通れない問題の提示です。

【著者紹介】
ジャン=リュック・ナンシー (Jean-Luc Nancy)
1940年ボルドー生まれ。ストラスブール(マルク・ブロック)大学名誉教授。
著書多数。邦訳書として『無為の共同体』『侵入者』(以上、以文社)、『自由の経験』『私に触れるな』(以上、未来社)、『ヘーゲル』『世界の創造、あるいは世界化』(現代企画室)、『肖像の眼差し』(人文書院)、『複数にして単数の存在』『共同-体』『声の分割』『訪問』(以上、松籟社)、『映画の明らかさ』(キアロスタミとの共著、松籟社)、『主体の後に誰が来るのか?』(編著、現代企画室)など。

『訳者紹介』
西谷 修 (にしたに おさむ)
1950年愛知県生まれ。東京大学法学部卒業、パリ第8大学留学。明治学院大学教授(フランス文学)を経て、現在、東京外国語大学大学院教授(思想文化論)。
著書に『「テロとの戦争」とは何か――9.11以後の世界』(以文社)、『増補・不死のワンダーランド』(青土社)、『世界史の臨界』(岩波書店)、『戦争論』(講談社学術文庫)『移動と離脱』などがあり、訳書にM・ブランショ『明かしえぬ共同体』(ちくま学芸文庫)、E・レヴィナス『実存から実存者へ』(講談社学術文庫)、P・ルジャンドル『ロルティ伍長の犯罪――〈父〉を論じる』(人文書院)、P・ルジャンドル『ドグマ人類学総説』(監訳、平凡社)など、多数。

【目次】
侵入者
ナンシー、他者の心臓
ワンダーランドからの声――「侵入者」の余白に
不死の時代 
 

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