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  2002年06月17日発売

過去の声
一八世紀日本の言説における言語の地位

酒井 直樹 著・監訳
川田潤・斎藤一・末廣幹
野口良平・浜邦彦 訳

A5判 上製カバー装 608頁
定価:本体6,800円+税
ISBN 4-7531-0221-1 C0010 
        〈私が話し、書く言葉は、私に帰属するものではない〉

 この意表をつく言葉で始まる本書は、18世紀日本(徳川期)の言説空間…漢字・国学・文学・歌論・歌学…における言語をめぐる熾烈な議論が、その果てになぜ日本語・日本人という起源への欲望を生み出したかを解き明かす。
シュタイ(主観・主体・主語・主題)・言語・文化・歴史の不可分の関係を論じ、「日本思想史研究」を50年ぶりに塗り替える、丸山真男以来の達成。

――転換する時代に応える、壮大な思想書の刊行!――
酒井直樹氏は『死産される日本語・日本人』(新曜社)、『日本思想という問題』(岩波書店)、また、交際的総合雑誌『トレイシーズ』(岩波書店)の代表編集として、既に多くの読者をもつ行動する思想家ですが、本書はそれらの活動の基盤になる主著の翻訳です。一八世紀(徳川期)の日本の思想界では、中国思想(朱子学)への批判が始まり、漢意(からごころ)と和魂(やまとごころ)の対立に至る言語をめぐる爆発的な論争が起こります。この論争の課程を明晰に紹介することによって、今日においても哲学上の根本問題である「シュタイ」(主観・主体・主語・主題)の諸相を明かし、アイデンティティに関わるラジカルな問いを提出します。本書の刊行目的は、丸山真男氏の大著『日本政治思想史研究』を凌ぐ現代の展望を提起すること、国際化によって改めて感心を高めている「日本研究」が文化の閉域に陥らないこと、そして社会の画一化がもたらす言葉の不自由を解放することです。

【著者・監訳紹介】
酒井 直樹 (さかい なおき)
1946年生まれ。1971年東京大学卒業。1980-83年シカゴ大学人文学部極東言語文明学科博士課程、シカゴ大学人文学部助教授を経て、現在、コーネル大学教授。近年は大学における教育活動のみならず、国際的な総合雑誌『トレイシーズ』(2000年5月、岩波書店発刊)の中心的な編集に携わり、急変する国際関係の分析と批評活動を精力的に展開している。
著作:『死産される日本語・日本人』(新曜社)、『日本思想という問題』(岩波書店)ほか、多数。

【訳者紹介】
●川田 潤 (かわた じゅん)
1966年生まれ。東北大学大学院博士課程中退、初期近代英文学およびユートピア文学専攻。現在、福島大学助教授。
共作:『新歴史主義からの逃走』(松柏社)。
翻訳:マーガレット・キャヴェンディッシュ「新世界誌または光り輝く世界」『ユートピア旅行記叢書2』所収(岩波書店)
●斎藤 一 (さいとう はじめ)
1968年生まれ。筑波大学大学院博士課程文芸・言語研究科単位取得退学。現在、帯広畜産大学専任講師。
著作:「翻案と翻訳――岡倉由三郎について」『帯広畜産大学学術研究報告人文社会科学論集』10:4、2001年3月。「日本の『闇の奥』」名波弘影他編『植民地主義とアジアの表象』筑波大学文化批評研究会、1999年3月。「英文学制度とコンラッドの「青春」」山形和美編『差異と同一化――ポストコロニアル文学論』(研究社出版)
●末廣 幹 (すえひろ みき)
1965年生まれ。筑波大学大学院博士課程文芸・言語研究科単位取得退学。現在、東京都立大学助教授。
著作:『国家身体はアンドロイドの夢を見るか――初期近代イギリス表象文化アーカイヴT』(責任編集、ありな書房)。
論文:「イスラム恐怖を超えて――『オセロー』とトルコ化の不安のレトリック」日本シェイクスピア協会編『シェイクスピア――世紀を超えて』(研究社)所収
“And Left Them More Rich What They Yielded”:Representation of Woman's Body and the Heterogeneous Economies in The Winter's Tale' in Yoshiko Kawachi,ed.,Japanese Studies in Shakespeare and His Contempo-raries (The Associated University Press).
●野口 良平 (のぐち りょうへい)
1967年生まれ。京都大学文学部卒。現在、立命館大学大学院在学。
著作:「C.S.パース 倫理から論理へ」『人間学命題集』(新曜社)
翻訳:ウィリアム・ヘイバー「人種主義のわな」『思想の科学』1990,2.
●浜 邦彦 (はま くにひこ)
1968年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程。現在、東京外国語大学非常勤講師。
共作:『カリブー――響きあう多様性』(ディスクユニオン)・『〈複数文化〉のために』(人文書院)、『思想読本 ポストコロニアリズム』(作品社)

【目次】
日本語版への序文
まえがき

序章 理論的準備
 言語にとって他なるもの
 言説空間とテクストの物質性
 非親和化をとおして「私たち」の閉鎖性に風穴をあけること
 本書を導く三つの関心
 言語の雑種性
 自己の脱中心化の論理

第T部 中心の沈黙――伊藤仁斎と間テクスト性の諸問題
第一章 言説編制様式における変化
 言説空間とテクスト性
 間テクスト性
 一つの出発
 「誠」と「偽」という観念
 「物」の地位
 自己の身体の不可視性
第二章 伊藤仁斎――身体としてのテクストとテクストとしての身体
 言説性批判
 超越主義と『近さ』
 言説における会話の出現
 発話行為と悪質なもの
 主体性と人称・人格
 非選言的機能と選言的機能
 変化という問題
第三章 テクスト性と社会性――実践、外部性、発話行為における分裂の問題
 「情」とテクスト性
 社会的行為の倫理性
 徳の刻印的性質
 制度と外部性
 「愛」と「道」

第U部 枠づけ――意味作用の剰余と徳川期の文学
第四章 発話行為と非言語表現的テクスト
 文学的言説と新しい編制
 見ることと読むこと
 枠組みとその効果
 語り
 歴史性の不在
 テクストの表象と表象されるテクスト
 ある状況における場違いでないテクストと場違いなテクスト
 身体行為と言行為的状況
第五章 代補
 発話行為への偏執的な関心の欠如
 俳諧とテクストの開放性
 絵入り狂言本
 口述表現的な連続体の重層化
 声と身体との分離
 直接的な、もしくは間接的な話法
 他のテクストの共存
 生と死
 読みの行為
 直接的な行為、間接的な行為
 入れ子構造、枠設定とイデオロギー
 再現-表象型とゲシュタルト型
第六章 異化とパロディ
 さまざまなジャンル、分類法
 書記素と多義性
 俳諧化あるいは二重の操作
 異化とパロディ
 複数の声
 視座あるいは射映
 テクストの物質性
 発話行為と身体
 知覚と自己の分裂

第V部 言語、身体、そして直接的なもの――
                        音声表記と同一なるもののイデオロギー
第七章 翻訳の問題
 〈特定の〉言語にとっての外部
 和訓の問題性
 内部と外部
 発話行為における言語表現的なものと非言語表現的なものの相互依存関係
 会話の優先
 会話の線条性と和訓
 体験的な知と観想的な知
 受動性と能動性、読みと書き
第八章 表音表記と歴史
 空間および時間的ずれとしての再現-表象
 古典の地位
 人間の身体と内部
 日本語の弁別的同定
 テクストへの想像的関係――表音表記とテクストの歴史性
 音声の先行性
 超越的価値の否定
 書記としての歴史的時間
 詩と理論の拮抗
 一つの言語のうちの異種混交
 統辞論――詞と辞
 テクストとその言行為的状況
 「情」と刹那性
 「誠」と沈黙
第九章 舞踏術の政治
 社会的現実のイデオロギー的構成
 統合の論理
 二つの記憶の形式、二つの歴史の意味
 主体を編む織機
 矛盾の場としての歌
 身体の書記
 舞踏術の政治
 死産される日本語・日本人
 言語の可能性としての死
 外部性
結論
 国民語と主体性
 言語における本来性
 普遍主義と特殊主義
 日本語の復活/維新

事項索引
人名索引
 

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