人間学論語 

                  (はしがき)著者より抜粋 
 論語は孔子と孔子をとりまく人々の言行録である。この書は、古来「宇宙第一の書」と絶賛され、世界的に最も有名な古典の一つである。中国においても、その歴史を通じて、これほど広く多くの人々に読まれた書物はないという。日本に伝わったのは、古事記、日本書紀によれば応神天皇の十六年(二八五)に百済の王仁が来朝して論語十巻を献上したとされている。年代については問題ああるとしても、とにかく千数百年にわたって論語はわれわれの多くの祖先の血肉となって読み継がれてきた。意識するとしないとにかかわらず、多くの日本人の思想形成にこれほど大きな影響を与えた書物は他にないと思う。
 昔は論語読みの論語知らずといった。もちろん今でもそういう人はある。しかし今の若い人には論語読まずの論語知らずの人が多い。それは論語がなんといっても二千五百年前の古典で、しかも深遠な意味を含めたものをごく簡潔に書いてあるので、今の人には読みなれないためにたしかにとっつきにくい点がある。それでこの解釈書は巷にあふれ戦後だけでも五十点にも達している。それらの多くが専門的な学者の書かれたもので、一般的にはやはりむずかしく生活にピタリとこない点がある。
 たまたま私が「朝の論語会」やPTAの「教養学級」などで長年論語を講義してきたことから、PTAの皆さんや生徒たちから今まで講義したものをまとめて出版してほしいという強い希望があった。私は必ずしもその任ではないと思ったが、教養者としての体験から、生徒に講義したことの骨子だけでもまとめておいて、後の学習するものに役立たせるのもあながち無意味でもないと思って、ここ五か年間に「朝の論語会」で素読味講したものの中から、比較的青少年の精神的滋養物として役立つもので、人口に膾炙しているものを百章だけ選んで私なりの評釈をして出版することにしたのである。これはあくまでも入門のための手引きで、読者がこれによって深山に入ることができれば、私の喜びこれに過ぎるものはない。

【著者紹介】
越川 春樹 (こしかわ はるき)
昭和7年  千葉県師範学校卒業
昭和24年 千葉県南条村立南条中学校長
昭和29年 第三回読売教育賞受賞
昭和33年 千葉県指導主事
昭和36年 千葉県船橋市立二宮中学高校
昭和41年 千葉県教育功労者として受賞
昭和49年 産業教育振興の功績者として文部大臣より表彰
昭和51年 光町懐徳書院(塾)再開設
昭和59年 産業教育振興の功績者として継続して文部大臣より表彰
平成5年  逝去
主著
『農村の師 大原幽学』(明徳出版社)
『大原幽学研究』(理想社)
『人間学百則――言志四録抄』(理想社)
『暁の鐘――次代を作る人々のために』(理想社)
『人間学論語』(以文社)
『校長清話』(以文社)
『一隅を照らす』(以文社)
『人間学言志録』(以文社)

【目次】
『人間学論語』に寄せて
はしがき

学習/本を務む/巧言令色/三省/実践の学/好学/貧富の道/人を知らず/志学/人の観察法/温故知新/不器/先行後言/学と思/知るということ/富貴貧賤に処する道/朝聞夕死/悪衣悪食を恥ずる者/利と怨み/位なきを憂えず/忠恕/義と利/父母の年/訥弁と実行/徳は孤ならず/顔回と子貢/朽木糞土/久敬/愚及ぶべからず/帰らんか/孔子の志/好学の人/賢なる哉回や/自分を見限るな/文と質/知・好・楽/博文約礼/術作/黙識/D吾が憂い/家庭生活の態度/行蔵/楽しみその中にあり/孔子の人柄/敏求/我が師あり/不能に問う/弘毅/驕と吝/意・必・固・我/多能/孔子賛/何陋/一簣/後生畏るべし/操守/恥じざる者/松柏の操/友の三段階/人間尊重/師弟の情/過不及/自己に生きる/仁者/信/人の美を成す/政教の要諦/文会/令せずして行なわれる/正直/狂狷/和同/真の人間/説ばしめ難し/剛毅木訥/貧富と人/学問の目的/言葉より実行/我を知る者/不可を知りて/修己治人/人と言を失う/志士仁人/これを如何せん/漫談グループ/恕/大衆の好悪/過ち/益友と損友/三戒/本性と習慣/徳の賊/三疾/飽食終日/君子も悪むことあり/斯人の徒/大義/君子の三変/日月の如し/知命

『人間学論語』のあとに
主要参考文献
索引 


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