戦後日本の社会思想史──近代化と「市民社会」の変遷
小野寺研太
装幀:難波園子
2015年6月18日発売
四六判 上製カバー装 352頁
定価:本体3,400円+税
ISBN 978-4-7531-0326-3
「市民社会」概念の変遷から見た日本の「近代」をめぐる壮大な思想史
「戦後日本の市民社会論」という、一見「古びた」ように見えるテーマを、現代にまで通じるアポリアを含んだ数々の思索の試みの痕跡として鮮やかに描き出した力作。
戦中期の市民社会概念、そして戦後の内田義彦、松下圭一、平田清明、見田宗介/真木悠介らの思想における市民社会の概念の真意、そしてその「近代」との葛藤とは?
「市民社会概念が編成された痕跡を探求することは、わたしたちを取り巻いている〈近代〉の機制そのものに気づき、批判的な眼差しを向けることになる。それは新たな展望を直ちに提示することではないとしても、新たな可能性の始点にはなるはずである」(本書「序」より)。
「(……)「戦後日本の市民社会論」となれば、「自律した個人からなる社会を理想とする…」といった定型的理解が持ち出され「そんなものはもう古い、限界は明らかだ」と評されて、たいがいは終わりである。(……)本書で示したように、「市民社会」の言説をめぐって検討が必要なのは、「擁護するか非難するか」のような単純な判断のためではなく、「なぜそんなことが言われたか」「その理論的特徴は何か」といったきめ細かな解明を通じて、わたしたちの思考のあり様を批判的に捉えたいからである」(本書「あとがき」より)。
目次
序
第1章 戦中の市民社会概念――統制経済論と生産力論
第2章 「人民」の水平的紺帯――戦後初期の内田義彦
第3章 戦後社会の文化変容と市民社会論――60年代の内田義彦
第4章 「自治」のリアリズム――松下圭一の思想遍歴
第5章 二つの正統派批判―市民社会論的社会主義
第6章 「市民社会」とユートピア――見田宗介/真木悠介の社会理論
むすび
著者
小野寺 研太(おのでら けんた)
1982年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。
現在、東京大学大学院総合文化研究科学術研究員および埼玉大学ほか非常勤講師。
主な論文:「内田義彦──戦後啓蒙の「市民社会」論」大井赤亥・大園誠・神子島健・和田悠編『戦後思想の再審判』(法律文化社、2015年)。
「日本における市民社会論の生成──戦時・戦後のアダム・スミス受容とその思想的射程」(『社会思想史研究』第34号、2010年)。
「内田義彦の市民社会論」(『相関社会科学』第19号、2010年)ほか。