肉体の知識と帝国の権力──人種と植民地支配における親密なるもの
アン・ローラ・ストーラー(永渕康之、水谷智、吉田信 訳)
装幀:難波園子
装画:宇佐美圭司
2010年1月21日発売
A5判 上製カバー装 368頁
定価:本体3,800円+税
ISBN 978-4-7531-0275-4
性と肉体にまつわる最も私的で親密なものこそ最も政治的である。フーコーの「人種」言説分析とフェミニズムの最先端から植民地の「性の歴史」と帝国の「生政治」を描き、従来の歴史学と人類学を解体する「感情の政治学」。
目次
1章 親密なるものの系譜――植民地研究の現在
親密なるものの軌跡
各章の位置づけ――植民地研究の動向
2章 植民地的範疇を再考する――ヨーロッパ人社会と支配の境界
デリにおける共同体の形成
デリにおける婚姻制限
道徳の守護者――女性の名誉と白人の威信
ヨーロッパ社会の構造化と貧困白人の問題
植民地における人間の範疇の排除と包摂
3章 肉体の知識と帝国の権力――人種の構築におけるジェンダーと道徳
政治的メッセージと性的隠喩
セックスと植民地統制の異なる範疇
植民地におけるヨーロッパ女性の制約
ヨーロッパ女性と人種の境界
人種主義者だが道徳的な女性、無垢だが不道徳な男性
人種と性禍の政治
ヨーロッパ人女性の管理と騎士道の容認
白人の退化、母性、帝国の優生学
退化の文化的力学
植民地の境界線上の子供たち――退化と混血の危機
ヨーロッパ人女性、人種、中産階級の道徳
帝国の優先順位――女性対男性道徳
支配と性道徳に関する戦略
4章 性の恥辱と人種の境界――文化的能力と混血のあやうさ
文化的能力、国民の同一性、混血
文化的否定と遺棄の人種主義的政治
不正な認知と混血の他の危険性
国民共同体の文化的境界
生地主義、血統主義、国籍
1989年の混血婚姻法
印欧人と祖国の探求
根無し草と文化的人種主義
文化的雑種性と拒絶の政治
5章 感情教育――帝国における境界線上の子供たち
ヨーロッパ人の子供と文化的感染――繰り返される枠組み
自分の場所と自分の人種を学ぶこと
植民地における保育所、言語、人種の政治
育児と白人向けの学校について
ヨーロッパ人社会における使用人と子供
人種形成と洗練性の習得
6章 フーコーを植民地的に読む――ブルジョワ的身体と人種的自己
フーコーにおいて人種はどこにあるのか
性の歴史/人種の歴史
地の象徴学からセクシュアリティの分析学へ
ブルジョワ的自己の植民地的洗練
子供のセクシュアリティと感情の疎外
さらなる考察
7章 ジャワにおける記憶すること――警告する物語
植民地の感情と具体的な記憶
植民地研究における記憶――貯水力のモデル
家庭内の転覆/もうひとつの意見
落ち着ける場所の外側の記憶
筋書のない記憶と拒絶された筋書
家族の肖像
反響するためらい――過度な行いをどのように判断するのか
感覚と気持――具体的なものの記憶
語ってほしい物語を超えて
エピローグ 安全地帯と比較の枠組みへの抗議
比較の枠組みについて
植民地研究においてジェンダーをとおして考えること
聖なるものと植民地の筋書をめぐって
著者
アン・ローラ・ストーラー(Ann Laura Stoler)
1982年コロンビア大学博士号取得。ミシガン大学教授を経て、現在ニューヨークの高等学術研究所(School for Advanced Research]教授。
邦訳に『プランテーションの社会史』(法政大学出版会)がある。
永渕 康之(ながふち やすゆき)
1959年生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科退学、博士(人間科学)。
現在、名古屋工業大学大学院工学研究科教授。著書に『バリ島』(講談社現代新書、サントリー学芸受賞)がある。
水谷 智(みずたに さとし)
1974年生まれ。オックスフォード大学歴史学部博士課程修了、博士(近代史学)。現在、同志社大学グローバル地域文化学部教授。
吉田 信(よしだ まこと)
1969年生まれ。神戸大学大学院法学研究科中退、修士(政治学)。現在、福岡女子大学国際文理学部准教授。