永井荷風に学ぶ諦めの哲学​──​諦めの哲学(抄)および関連論考 

鈴木文孝

装幀:難波園子
2019年8月7日発売
四六判 上製カバー装 186頁
定価:本体2,400円+税
ISBN 978-4-7531-0354-6

「諦観」としての諦め(荷風文学)と「放棄」としての諦め(素粒子物理学)の効用を析出。自分の力では対処できない情況や事態について、「哲学すること」の営為が切り開く新たな地平を示す。著者の荷風研究の集大成。
旧著『諦めの哲学』に、荷風「雪の日」への考察(「わかれのさびしさ」とその「回想」、そして「詩作」への根源的考察)を追加収録。
自選作品集の第4弾。


目次

はじめに

第1章 永井荷風『冷笑』における「諦め」
 第1節 「八笑人」の閑談会の企画──「笑ふ」ということ
 第2節 閑談会の企画の発端とメンバー推薦の模様
 第3節 諦めを語る笑人たち

第2章 くりこみ理論と諦めの哲学
 第1節 くりこみ理論における放棄の原理
 第2節 くりこみ理論の完成期における日本の物理学研究の状況
 第3節 くりこみ理論と諦めの思想
 第4節 九鬼周造『「いき」の構造』を参考にして
 第5節 くりこみ理論が現代の素粒子物理学において有する意義
 第6節 朝永振一郎博士における「放棄の原理」というフィロソフィーの芽生え
 第7節 統一場理論の歴史的伝統と素粒子物理学にとっての意義──諦めを超越したアインシュタインの探究心を念頭に置いて

第3章 雪の日の回想
 第1節 青春期の荷風の落語家修業
 第2節 『雪の日』について

結び 荷風『冷笑』における諦めの哲学――比較哲学的考察の地平を求めて
付記 


著者

鈴木 文孝(すずき ふみたか)
1940年静岡県に生まれる。1963年、東京教育大学文学部卒業。1970年、東京大学大学院人文科学研究科博士課程を学科課程修了にて満期退学。2004年、愛知教育大学教育学部を定年により退職。現在、愛知教育大学名誉教授、文学博士(筑波大学)。
著書
 『カント研究――批判哲学の倫理学的構図』(以文社、1985年)
 『カント批判――場の倫理学への道』(以文社、1987年)
 『倫理の探究』(以文社、1988年)
 『共同態の倫理学――カント哲学及び日本思想の研究』(以文社、1989年)
 『近世武士道論』(以文社、1991年)
 『若き荷風の文学と思想』(以文社、1995年)
 『カントとともに―カント研究の総仕上げ』(以文社、2009年)
 『永井荷風の批判的審美主義――特に艶情小説を巡って』(以文社、2010年)
 『諦めの哲学』(以文社、2011年)
 『西洋近代哲学とその形成』(以文社、2013年)
 『カントの批判哲学と自我論』(以文社、2015年)
 『カント研究の締めくくり』(以文社、2016年)
 『増補 カント研究の締めくくり』(以文社、2016年)
 『改訂版 諦めの哲学』(以文社、2016年)
 『カントとその先行者たちの哲学』(以文社、2018年)
翻訳
 マックス・シェーラー『超越論的方法と心理学的方法―哲学的方法論の根本的論究』(『シェーラー著作集』14所収、白水社、1976年)