シネ砦 炎上す
安井豊作
装幀:高麗隆彦
2011年12月7日発売
A5判 上製カバー装 408頁
定価:本体3,800円+税
ISBN 978-4-7531-0295-2
〈幻の批評家〉がついにヴェールを脱いだ。真の映画批評はここからはじまる
青山真治、黒沢清、佐藤真、塩田明彦、篠崎誠、諏訪敦彦、高橋洋、万田邦敏……世界に飛翔した日本の世紀末映画の作り手たちに大きな影響を及ぼした批評家にして影の仕掛け人。その25年間にわたる全評論を網羅したこの大冊こそ、未来の映画と批評の姿をかいまみさせる大いなる道しるべである。
蓮實重彥、柄谷行人らの〈現代思想〉と映画を架橋して「ゴダールの宇宙」「キャメロンの時代」といった独自の概念を創造して映画の語り方の土台をつくった思想家にしてプロデューサーの全貌がここに。
巻末に、互いに影響を及ぼしあった、いまや日本を代表する黒沢清監督と、アメリカ映画の現在についての語り下ろし対談を収録。
「安井豊作は映画批評の現在が最も必要とする存在である。安井がいなくても私は映画作家になっただろう。だが、安井がいなければ私はいまの私のような映画作家にならなかったことはまちがいない。これでやっと、この十年、陥没していたミッシング・リンクが埋まる!」
――青山真治(映画監督)
目次
序章
砦と映画
Ⅰ ゴダールの宇宙
ⅰ あるものはある
ⅱ ゴダール的問題とはなにか
ⅲ シネマと資本
Ⅱ アメリカのシネマと構造
ⅰ 「亡霊」としての50年代
ⅱ 「暗さ」の映画史
ⅲ キャメロンの時代
ⅳ 黒人映画は不気味につまらない
Ⅲ ヨーロッパからの脱出は不可能である
ⅰ ヨーロッパとはなにか
ⅱ 表象空間をめぐる闘争と哀歌
ⅲ アキ・カウリスマキと田中小実昌の哲学
Ⅳ 日本映画の「日本」はうっとうしい
ⅰ シネクラブ時代
ⅱ 日本映画の「黒と青」は「日本」映画を撮らない。
ⅲ 「哀れで美しい日本」映画
Ⅴ スローなロックでいこう
ⅰ ヴィム・ヴェンダースの感動の映画たち
ⅱ 3枚のアメリカのLP
ⅲ エルヴィス・プレスリーは映画が好きだった
終章
アメリカ映画の現在 黒沢清との対話
主要人名索引
映画題名索引
著者
安井 豊作(やすい ほうさく)
1960年生まれ。映画評論家、プロデュ-サー。法政大学在学中に学生会館で映画上映企画「シアター・ゼロ」、音楽ライブ企画「ロックス・オフ」を組織。その後、アテネ・フランセ文化センターでプログラム・ディレクターをつとめるかたわら1986年から蓮實重彥責任編集の「リュミエール」で映画批評活動をはじめる。梅本洋一や現boid代表の樋口泰人とともに「カイエ・デュ・シネマ・ジャポン」編集委員をつとめたあと、1997年から映画美学校の初代事務局長として講師陣の青山真治、黒沢清、佐藤真、塩田明彦、篠崎誠、諏訪敦彦、高橋洋、万田邦敏ら世界で活躍する監督・脚本家に大きな影響を及ぼす。2006年から同校講師として「安井ゼミ」を主宰し機関紙「シネ砦」を発行。共著書に「ロスト・イン・アメリカ」(デジタル・ハリウッド、2000)、「黒沢清の映画術」(新潮社、2006)など。黒沢清監督の『よろこびの渦巻』(1992)、『大いなる幻影 Barren Illusion』(1999)には俳優として出演している。2010年から「安井豊(やすい・ゆたか)」を現在の筆名にあらためる。