主体の論理・概念の倫理──20世紀フランスのエピステモロジーとスピノザ主義

上野修、米虫正巳、近藤和敬 編

装幀:近藤みどり
装画:Samuel Hirszenberg, Spinoza (1907). Courtesy A. A. Deineka Picture Gallery, Kursk, Russia.
Photo by Culture Club/Getty Images
2017年2月27日発売
A5判 上製カバー装 488頁
定価:本体4,600円+税
ISBN 978-4-7531-0338-6​

近年、哲学研究のなかで参照されることはあっても本格的に言及されることが少なかった17世紀の哲学者スピノザ。本書はフランスでのアルチュセールの〈スピノザ集団〉、ラカン、バディウが関与した『分析手帖』、ブランシュヴィックからカヴァイエス、ヴェイユマンへとつながる「概念の哲学」の系譜を辿った本邦初の本格的なスピノザの研究。


目次

スピノザ人物相関図

第1部〈概念〉
 導入  カヴァイエス、エピステモロジー、スピノザ(近藤和敬)
 第1章 一つの哲学的生成――ブランシュヴィックからカヴァイエスへ(中村大介)
 第2章 ジャン・カヴァイエス――概念の哲学 その下部構造の諸要素(ウーリヤ・ベニス=シナスール)
 第3章 カヴァイエスとスピノザ『エチカ』のあいだに見出しうる一つの関係――カヴァイエスはなぜ『公理的方法と形式主義』の口頭試問でスピノザの加護を求めたのか(近藤和敬)
 第4章 ヴュイユマン『代数学の哲学』とスピノザ『エチカ』の幾何学的秩序(原田雅樹)

第2部〈主体〉
 導入  エピステモロジーと精神分析――ラカン、ドゥサンティ、スピノザ(上野修)
 第1章 構造と主体の問い――『分析手帖』という「出来事」(坂本尚志)
 第2章 ラカンの「エピステモロジー」における真理の探究について(上尾真道)
 第3章 ラカンにおけるスピノザのプレゼンス(上野修)
 第4章 ラカンと数理論理学――フランス現代思想におけるスピノザ受容の一側面として(信友建志)
 第5章 概念の哲学・精神分析・生命の哲学の知られざる結節点――ドゥサンティとそのスピノザ主義について(米虫正巳)

第3部〈生〉
 導入  生命のエピステモロジーとスピノザ主義(米虫正巳)
 第1章 概念の哲学から生命の哲学へ―カンギレムによるスピノザ主義の展開(藤井千佳世)
 第2章 カンギレムとヘーゲル――概念の哲学としての生命の哲学(坂本尚志)
 第3章 ドゥルーズにとってのスピノザ――『エチカ』の意味論的解釈をめぐって(朝倉友海)
 第4章 構成主義としての哲学と内在としての生――ドゥルーズ/スピノザとゲルー/フィヒテ(米虫正巳)

第4部〈現在〉
 第1章  現代英語圏におけるスピノザ読解――分析形而上学を背景にした、スピノザの必然性概念をめぐる側面的考察(木島泰三)
 鼎談  総括と展望

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人名索引


編者

上野 修 (うえの おさむ)
1951年生まれ。大阪大学大学院文学研究科教授。
著書に、
『スピノザの世界――神あるいは自然』(講談社、2005年)
『デカルト、ホッブズ、スピノザ――哲学する17世紀』(講談社学術文庫、2011年)
『哲学者たちのワンダーランド――様相の17世紀』(講談社、2013年)
『スピノザ『神学政治論』を読む』(ちくま学芸文庫、2014年)など。

米虫 正巳 (こめむし まさみ)
1967年生まれ。関西学院大学文学部教授。
編著に、
『フランス現象学の現在』(法政大学出版局、2016年)
共著に、
『エピステモロジー 20世紀のフランス科学思想史』(慶應義塾大学出版会、2013年)
『ドゥルーズ/ガタリの現在』(平凡社、2008年)など。

近藤 和敬 (こんどう かずのり)
1979年生まれ。鹿児島大学学術研究院法文学系准教授。
著書に、
『構造と生成Ⅰカヴァイエス研究』(月曜社、2011年)
『数学的経験の哲学――エピステモロジーの冒険』(青土社、2013年)
『〈内在の哲学〉へ ――カヴァイエス・ドゥルーズ・スピノザ』(青土社、2019年)など。