四つの未来
ピーター・フレイズ
酒井隆史 訳
装幀:大友哲郎
カバー写真:河西遼
2023年11月20日発売
四六判 並製カバー装 272頁
定価:本体2,700円+税
ISBN 978-4-7531-0380-5
いわゆる「ジェネレーション・レフト」を牽引してきた『ジャコバン』誌(https://jacobin.com/)の立ち上げメンバーで編集委員のピーター・フレイズが放つ、「資本主義以後」の世界へ向けた四つの展望。本書は『ジャコバン』誌とヴァーソ(Verso)社のコラボレーションによるもので、すでに7ヶ国語以上に翻訳されている。
フレイズが描き出すのは四つの展望(ありうべき未来)、すなわち「コミュニズム」「レンティズム」「ソーシャリズム」「エクスターミニズム(絶滅主義)」である。この四つの未来は同時にあらわれもするし、いっぽうでいずれかの傾向を色濃くすることもあるだろう。
(たとえば、日本でも近々解禁になるという「ライドシェアサービス」は、ある種の「ソーシャリズム」的な側面を持ち合わせつつも「レンティズム」に傾くことが予想できるし、また、現在イスラエル国家のやっていることは端的な「エクスターミニズム(絶滅主義)」である)。
いずれにせよ、フレイズにとって、私たちが進む未来を決めるのは広い意味での「政治(的闘争)」であり、そこでは「階級(闘争)」という視点は欠かせない。
そして、この四つの未来に不可避にかかわっていくる「二つの妖怪」がいる。それは、従来の労働を不要にしていく「自動化」と、私たちの生の基盤を揺るがす「気候危機」である。
この「二つの妖怪」と「四つの未来」の絡み合いによる──しかしこれはけっして未来予測ではない──フレイズの展望は、私たちの思考=行動に(失われて久しい)力強い「未来への想像力」を添えてくれるはずである。
目次
序 論 黙示録とユートピアとしてのテクノロジーとエコロジー
ロボットの台頭
機械仕掛けの惑星の恐怖
気候危機という妖怪
第一章 コミュニズム──平等と豊かさ
未来の台所
仕事と意味
これが麗しきわが人生なのか?
たくさんのステイタスのヒエラルキーを開花させよう
ビットコイン、ドッジズ、ウッフィー
第二章 レンティズム──ヒエラルキーと豊かさ
政治と可能性
レントのアート
稀少性と財産
反『スター・トレック』
第三章 ソーシャリズム──平等と稀少性
資本主義と稀少性
ディストピアを越えて
わたしたちの怪物たちを愛すること
エコソーシャリズムと国家
計画としての市場
第四章 エクスターミニズム──ヒエラルキーと稀少性
少数者のコミュニズム
みなごろしの最終段階
飛び地の諸社会と社会統制
エンクレーヴからジェノサイドへ
結 論 いくつかの移行と展望
付 録 死の党の台頭
訳者解説
著者
ピーター・フレイズ(Peter Frase)
『ジャコバン』誌(https://jacobin.com)編集委員.アメリカ民主社会主義者同盟(The Democratic Socialists of America)ハドソンバレー支部副委員長.『ジャコバン』誌のほか,『イン・ディーズ・タイムズ』(In These Times)などさまざまな媒体で執筆.本書(Four Futures: Visions of the World After Capitalism, Verso, 2016)は,韓国語,スウェーデン語,ルーマニア語,ポーランド語,トルコ語,イタリア語に翻訳されている.
酒井 隆史(さかい たかし)
1965年生まれ.大阪府立大学教授.専門は社会思想,都市史.
著書に,『賢人と奴隷とバカ』(亜紀書房),『ブルシット・ジョブの謎』(講談社現代新書),『完全版 自由論』(河出文庫),『暴力の哲学』(河出文庫),『通天閣 新・日本資本主義発達史』(青土社)など.
訳書に,デヴィッド・グレーバー+デヴィッド・ウェングロウ『万物の黎明』(光文社),デヴィッド・グレーバー『ブルシット・ジョブ』(共訳,岩波書店),『官僚制のユートピア』(以文社),『負債論』(共訳,以文社),ピエール・クラストル『国家をもたぬよう社会は努めてきた』(洛北出版)など.