大地に住む

ニコラ・トリュオングとの対談録

ブリュノ・ラトゥール 荒金直人訳

装幀:近藤みどり
2024年7月31日発売
四六判 上製カバー装 176頁
定価:本体2,400円+税
ISBN 978-4-7531-0389-8

 2022年10月に惜しまれながらこの世を去った科学人類学者/哲学者ブリュノ・ラトゥール。死の前年には、これまでの功績をたたえ、第36回(2021年)京都賞(思想・芸術部門)が贈られた。自然・文化という二項対立的・二元論的な「近代」のあり方を問い直すその知的探究は、実験室内の生活を事細かに描いた民族誌的記述に端を発し、エコロジー、法律、現代性、政治性、宗教、科学と技術など、さまざまな知の領域へと展開していった。本書は、最晩年のラトゥールが、ARTE Franceの取材に応じて制作された対談動画に基づいて編まれ、死後、フランス本国で刊行された。
本書掲載のインタビューでは、ラトゥールは多岐にわたる自らの仕事を振り返り、生涯を通じて問い続けたその哲学の全貌を丁寧に解説していく。ブリュノ・ラトゥール自身による、ラトゥール哲学の最良の入門書。

「ラトゥールの思想は一つの哲学として成立している。このことは間違いない」(訳者解題より)

「私が自分が社会学者であるのか哲学者であるのか決して分からないことの理由は、社会性を理解するために、私が複数の存在様式に関心を向けるからです。そして、その同じ理由によって、私はやはり本当に哲学者なのです。もし私が複数の存在様式について思考することのできる哲学者でなければ、私は社会性を理解することができません。」(本書より)


目次

凡 例

序 文 ――ニコラ・トリュオングによる

1 世界の変更

2 近代性の終焉

3 ガイアの督促

4 どこに着地すべきか

5 新たなエコロジー階級

6 共同的な仕組みを作り出す

7 宗教的なものの真理

8 作られている通りの科学

9 存在様式

10 政治の円環

11 哲学は本当に美しい

12 リロへの手紙

謝 辞

訳者解題


著者

ブリュノ・ラトゥール  (Bruno Latour)  (著/文)

人間・非人間に拘らず、あらゆる物理的・抽象的・概念的存在を行為者と見做し、無数の行為者の関係としてのこの世界の構築的・被構築的性質を捉えようとしたフランスの哲学者。科学と政治の関係を問い、両者を分離して制御しようとした近代特有の構造では捉え切れないものとして、地球環境問題に注目した。主な邦訳文献として『パストゥール あるいは微生物の戦争と平和、 ならびに「非還元」 』(荒金直人訳、以文社)、『ラボラトリー・ライフ――科学的事実の構築』(スティーヴ・ウールガーとの共著、立石裕二/森下翔監訳、ナカニシヤ出版)、『科学が作られているとき―― 人類学的考察』(川崎勝/紀代志訳、産業図書)、『虚構の「近代」―― 科学人類学は警告する』(川村久美子訳、新評論)、『科学論の実在―― パンドラの希望』(川崎勝/平川秀幸訳、産業図書)、『社会的なものを組み直す――アクターネットワーク理論入門』(伊藤嘉高訳、法政大学出版局)、『近代の〈物神事実〉崇拝について――ならびに「聖像衝突」』(荒金直人訳、以文社)、『諸世界の戦争―― 平和はいかが?』(工藤晋訳、以文社)、『地球に降り立つ―― 新気候体制を生き抜くための政治』(川村久美子訳、新評論)、『ガイアに向き合う―― 新気候体制を生きるための八つのレクチャー』(川村久美子訳、新評論)など。

荒金 直人  (アラカネ ナオト)  (翻訳)

1969年生まれ。ニース・ソフィア・アンティポリス大学(フランス)にて哲学博士号を取得。慶應義塾大学理工学部准教授。著書に『写真の存在論――ロラン・バルト『明るい部屋』の思想』(慶應義塾大学出版局)、訳書にジャック・デリダ著『フッサール哲学における発生の問題』(合田正人との共訳、みすず書房)、ブリュノ・ラトゥール著『近代の〈物神事実〉崇拝について――ならびに「聖像衝突」』(以文社)、ブリュノ・ラトゥール著『パストゥール あるいは微生物の戦争と平和、 ならびに「非還元」 』(以文社)など。