無為の共同体

装幀・装画:宇佐美圭司
2001年6月15日発売
A5判 上製カバー装 288頁
定価:本体3,500円+税
ISBN 978-4-7531-0215-0

無為の共同体──哲学を問い直す分有の思考

ジャン=リュック・ナンシー(西谷修、安原伸一朗 訳)

ジョルジュ・バタイユの再解釈とテクスト解読をとおして「共同体」についての思考を更新したナンシーの主著。このナンシーの企ては、かのブランショを刺激し、それが『明かしえぬ共同体』となって結実したことは有名である。
〈壁〉の崩壊以後、「グローバリゼーション」がナショナリズムを再燃させ、〈国民共同体〉の強化を図ろうとする動向が強まる今日、20世紀世界の経験を踏まえた根源的な思考とアクチュアリティに富んだ本書の〈共同体〉の問いは、現代を思考するために避けて通ることはできない。現代思想の革新としてのみならず、近年盛んに論じられている「国民国家論」の先にある問題としても、新鮮な展望を得ることができるだろう。


目次

第1部 無為の共同体
第2部 途絶した神話
第3部  「文学的共産主義」
第4部  〈共同での存在〉について
Ⅰ(〈共同での存在〉について)
Ⅱ(〈共同での〉の意味)
Ⅲ(〈共同での〉ということ)
第5部 有限な歴史

私たちの共通の果敢なさ(日本語版のために)

「〈分有〉、存在の複数性の思考――あとがきに代えて」


著者

ジャン=リュック・ナンシー(Jean-Luc Nancy)
1940年生まれ。ストラスブール大学名誉教授。
『イメージの奥底で』『侵入者』(以文社)、『自由の経験』(未來社)、『ヘーゲル』『世界の創造、あるいは世界化』(現代企画室)、『肖像の眼差し』(人文書院)ほか、訳書多数。

訳者

西谷 修(にしたに おさむ)
1950年生まれ.東京大学法学部卒業,パリ第Ⅷ大学留学。東京外国語大学大学名誉教授。
著書に『不死のワンダーランド』(増補版,青土社),『戦争論』(講談社学術文庫)、『世界史の臨界』(岩波書店)、『〈テロル〉との戦争』(以文社)など。訳書にM・プランショ『明かしえぬ共同体』(ちくま学芸文庫)、ピエール・ルジャンドル『ドグマ人類学総説』(平凡社)など多数。

安原 伸一朗(やすはら しんいちろう)
1972年生まれ。文学博士(パリ第8大学)。日本大学商学部准教授。
共訳書に『ブランショ政治論集――1958‐1993』(月曜社)など。