〈帝国〉──グローバル化の世界秩序とマルチチュードの可能性
アントニオ・ネグリ、マイケル・ハート(水嶋一憲、酒井隆史、浜邦彦、吉田俊実 訳)
グローバル化による国民国家の衰退と、生政治的な社会秩序の中から立ち現れてきた世界秩序=〈帝国〉とは何か? この――かつての帝国主義の時代の権力とは異なる――〈帝国〉という新たな主権的権力は、私たちの生といかなる関係にあるのか? 21世紀を予告した世界的ベストセラー。
目次
第1部 現代の政治的構成
第1章 世界秩序
第2章 生政治的生産
第3章 〈帝国〉内部のオルタナティヴ
第2部 主権の移行
第1章 二つのヨーロッパ、二つのモダニティ
第2章 国民国家の主権
第3章 国民的主権の弁証法
第4章 移行の徴候
第5章 ネットワーク権力:合衆国の主権と新しい〈帝国〉
第6章 〈帝国〉の主権
間奏曲:対抗 −〈帝国〉
第3部 生産の移行
第1章 帝国主義の諸限界
第2章 規律的統治性
第3章 抵抗、危機、変革
第4章 ポストモダン化、あるいは生産の情報化
第5章 混合政体
第6章 資本主義的主権、あるいはグローバルな管理社会を行政管理する
第4部 〈帝国〉の衰退と没落
第1章 潜在性
第2章 発生と腐敗
第3章 〈帝国〉に抗するマルチチュード
注
索引
著者
アントニオ・ネグリ(Antonio Negri)
1933年生まれ。元パドヴァ大学政治社会科学研究所教授。60年代にイタリアの非共産党系左派の労働運動の潮流(オペライスモ〔労働者主義〕)の理論的指導者として頭角を現わし、70年代にはアウトノミア運動の中心人物となる。しかし79年、運動に対する弾圧が高まるなか、テロリストという嫌疑をかけられ逮捕・投獄される。その後、81年の獄中で執筆された画期的なスピノザ論『野生のアノマリー』(作品社、2008年)を出版、83年にフランスに亡命。以後14年間にわたりパリ第8大学などで研究・教育活動の携わったのち、97年7月、イタリアに帰国し、ローマ郊外のレビッビア監獄に収監されたが、自由の身となり、研究/著述活動を続けている。
『〈帝国〉』以降のマイケル・ハートとの共著に、『マルチチュード』(NHKブックス、2005年)、『コモンウェルス』(同、2012年)など。フェリックス・ガタリとの共著に『自由の新たな空間』(朝日出版社、1986年)がある。著書に、『構成的権力』(松籟社、1999年)、『転覆の政治学』(現代企画室、2000年)など。
マイケル・ハート (Michael Hardt)
1960年生まれ。デューク大学文学部准教授。ワシントン大学で比較文学を修めたのち、パリ第8大学で当時フランスに亡命中のアントニオ・ネグリに師事。ネグリのスピノザ論『野生のアノマリー』を英訳(1991年)。単著として『ドゥルーズの哲学』(法政大学出版局、1996年)がある。また、『〈帝国〉』以前に出版されたネグリとの共著に『ディオニュソスの労働』(人文書院、2008年)がある。
訳者
水嶋 一憲(みずしま かずのり)
1960年生まれ。大阪産業大学経済学部教授。
論文に「転形期の未来――新反動主義かアシッド共産主義か」(『現代思想』2019年6月号)など。
酒井 隆史(さかい たかし)
1965年生まれ。大阪府立大学教授。
著作に『完全版 自由論』(河出文庫)、『通天閣』(青土社)など。
浜 邦彦(はま くにひこ)
1968年生まれ。早稲田大学教育学部准教授。
編著に『ディアスポラと社会変容』(国際書院)など。
吉田 俊実(よしだ としみ)
1954年生まれ。東京工科大学教養学環教授。
翻訳に『淑女が盗みにはしるとき』(共訳、国文社)など。