ジャン・ジュネ──身振りと内在平面
宇野邦一
『花のノートルダム』『薔薇の奇蹟』『ブレストの乱暴者』『泥棒日記』などでジュネは、悪や犯罪や同性愛の文学として読まれてきた。しかし永い執筆の空白を経て、パレスチナを舞台にした『恋する虜』の刊行とともに生涯を閉じた。
本書は、この空白のなかにあえ政治と文学の葛藤を読み込み、それをジュネ文学の〈身振り〉と〈内在平面〉として丁寧に分析していく。サルトル、バタイユ、デリダのジュネ論を大胆に更新して、〈形式や秩序や領土の外にたえず自己を開いていく生はどのように可能か?〉という現代思想の緊急の問いに応える透明なエクリチュール。
目次
ジュネと内在平面
エクリチュールと内在平面
エクリプセ
襞の脅威
声の分岐
縦揺れ、混淆
ピエタというイコン
権力の平面
絵画論と内在平面
ジュネの奇蹟
ジュネの時間 序曲
監獄と小説
非歴史の歴史
折り目、幻影、窪み
文字への懐疑、始まりの波
思考の警察
黒い戦士
ジュネの音楽
ピエタ
影絵芝居
偶然
大使と琺瑯
野ばら
ヘリオガバルス
二つの演劇
白と無政府
みたされる砂漠
読みの軌跡
ジュネと非権力
犯罪舞踏そして世界地図
最後の本
煙と眼球
霧と鏡像
政治的なものの奇妙な「葬儀」
ジャン・ジュネ年譜
書誌
『ジュネの奇蹟』あとがき
後記
初出一覧
著者
宇野 邦一(うの くにいち)
1948年生まれ。京都大学文学部卒業後、パリ第8大学で学び博士号取得(指導教授はジル・ドゥルーズ)。立教大学現代心理学部名誉教授。
著書:『アメリカ・宗教・戦争』(せりか書房)、『ドゥルーズ 流動の哲学』(講談社)、『アルトー 思考と身体』(白水社)など多数。