非対称化する世界

装幀:難波園子
装画:宇佐美圭司
2005年3月11日発売
四六判 上製カバー装 256頁
定価:本体2,400円+税
ISBN 978-4-7531-0239-4​

非対称化する世界 ──『〈帝国〉』の射程

市田良彦、宇野邦一、遠藤乾、尾崎一郎、酒井隆史、酒井直樹、トニ・ネグリ、西谷修、マイケル・ハート

ネグリ=ハートの『〈帝国〉』を、その解説ではなく、彼らによって提起された問題をどう受けとめ、展開していくかを主題化した、9・11以後の世界を視野に入れた〈状況への発言〉集。


目次

救済の夢と抵抗――ネグリ&ハートの『〈帝国〉』によせて (西谷修)
・〈帝国〉概念の魅力  
・マルクス主義の“余生”と“転生”   
・「9・11」との遭遇  
・メシアニズムの影  
・普遍主義の限界  
・マルチチュードの存在論的コンテクスト  

共犯性としてのスーパー国家性(酒井直樹)
・イラク占領と日本占領の語り  
・新植民地政策としての日本占領  
・国民主義の転位  
・〈帝国〉――東アジアからの視点  
・〈帝国〉と国民主義の共犯性 

主権、帝国(主義)、民主主義――『〈帝国〉』の射程(遠藤乾)
・世界秩序賛歌――方法的ナショナリズムからの脱却  
・「主権」――複雑系の戦線  
・9・11後の米国――〈帝国〉か帝国主義国か  
・新しい民主主義?――国民の不可能性、マルチチュードの不可能性 

貨幣の帝国的循環と価値の金融的捕獲(市田良彦)
・〈帝国〉とジャパン・マネー  
・プラザ合意の市場的帰結  
・貨幣の帝国循環と戦争  

〈帝国〉における包摂と排除――「生政治」についてのノート(酒井隆史)
・ポストフォーディズムにおける貧民  
・オペライスモ的反転  
・歴史のなかへの生命の登場  
・生権力と生政治  
・ポストフォーディズムのフーコー  
・保障と自律  

隠れた生産の場所に降りて行くこと(宇野邦一)
・構成的なアメリカ  
・68年はマルチチュードだったのか  
・近代あるいは戦争機械  
・アメリカの「裏切り」  
・葛藤に満ちた生産的なジャングル  

マルチチュードの(不)可能性(尾崎一郎)
・はじめに  
・〈帝国〉という非‐場  
・非−場における闘争/抵抗  
・存在の新たな意味  

マルチチュードの存在論的定義に向けて(トニ・ネグリ/箱田徹 訳)

主権、マルチチュード、絶対民主制――『〈帝国〉』をめぐる討議(マイケル・ハート/聞き手:トマス・ダム/水嶋一憲 訳)
・協働作業と一般的知性  
・主権への抵抗と絶対民主制  
・ネーションと異種昆交性のポリティクスを超えて  
・『〈帝国〉』の方法論をめぐって  
・〈帝国〉と外部の不在  
・マルチチュードの理論に向けて


著者

西谷 修(にしたに おさむ)
1950年生まれ。哲学。
著書に『増補・不死のワンダーランド』(青土社)など。

酒井 直樹(さかい なおき)
1946年生まれ。日本思想史。
著書に『過去の声』(以文社)など。

遠藤 乾(えんどう けん)
1966年生まれ。政治学。
著書に『グローバル・コモンズ』(岩波書店)など。

市田 良彦(いちだ よしひこ)
1957年生まれ。社会思想史。
著書に『闘争の思考』(平凡社)

酒井 隆史(さかい たかし)
1965年生まれ。社会思想史。
著書に『決定版 自由論』(河出文庫)など。

宇野 邦一(うの くにいち)
1948年生まれ。哲学。
著書に『破局と渦の考察』(岩波書店)など。

尾崎 一郎(おざき いちろう)
1966年生まれ。法学。
論文に「生き甲斐としてのコミュニティ」(『法社会学』第55号)など。

トニ・ネグリ (Antonio Negri)
1933年生まれ。
『〈帝国〉』の共著者。

マイケル・ハート (Michael Hardt)
1960年生まれ。
『〈帝国〉』の共著者。