民主主義の逆説
シャンタル・ムフ(葛西弘隆 訳)
スペクタクルな議会政治が横行し、民主主義が危機に瀕している状況下で、「政治的なもの」とは何かを問う。ロールズやハーバマスの〈合意形成〉の政治学を批判的に検討し、カール・シュミットの政治論とウィトゲンシュタインの哲学から、画期的な「ラディカル・デモクラシー」論を展開する。
目次
序章 民主主義の逆説
第1章 民主主義、権力、「政治的なもの」
多元主義と近代民主主義
多元・複数主義、権力、抗争性
政治的自由主義
重なり合う合意、あるいは構成的合意
民主主義と決定不可能性
第2章 カール・シュミットと自由民主主義の逆説
民主主義、同質性、シティズンシップの境界
民主主義の包摂/排除の論理
討議民主主義とその欠点
多元主義とその限界
シュミットの虚偽のジレンマ
第3章 ウィトゲンシュタイン、政治理論、民主主義
普遍主義対コンテクスト主義
実質としての民主主義、もしくは手続きとしての民主主義
民主主義的合意と討議的多元主義
ウィトゲンシュタインと責任
第4章 闘技的民主主義モデルのために
討議民主主義――その目標
多元主義からの逃走
民主義への忠誠――どちらの?
「闘技的」民主主義モデルのために
第5章 対抗者なき政治?
対立と現代デモクラシー
政治と政治的なもの
グローバリゼーションを問題化する
左翼と平等
新しい左翼のプロジェクト
結論 民主主義の倫理
解題=ラディカル・デモクラシー論の現在(葛西弘隆)
著者
シャンタル・ムフ(Chantal Mouffe)
ウェストミンスター大学民主主義研究所教授(政治理論)。ラディカル・デモクラシー論を展開し、非合理主義的アプローチによる政治理論、闘技的民主主義論を提唱。
主要著作:『ポスト・マルクス主義と政治』(大村書店、復刻新版、2000年)、『政治的なるものの再興』(日本経済評論社、1988年)、『政治的なものについて』(明石書店、2008年)、『左派ポピュリズムのために』(明石書店、2019年)編者に『カール・シュミットの挑戦』(風行社、2006年)などがある。
訳者
葛西 弘隆(かさい ひろたか)
1993年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、1999年東京外国語大学大学院地域文化研究科単位取得退学、博士(学術)。現在、津田塾大学学芸部国際関係学科教授(政治学、思想史)。訳書に、ヴィクター・コシュマン『戦後日本の民主主義革命と主体性』(平凡社、2011年)。