西田幾多郎と国家への問い
嘉戸一将
主権論としての「絶対矛盾的自己同一」
新たに発見された1941年の田中宛書簡から、西田幾多郎の主権・国家論を再考。西田の晩年、「絶対無」や「絶対矛盾的自己同一」といった固有の用語をベースに呈示されたその主権論は何を課題としていたのか。また、西洋から法体系や国家の理論を導入しながら、天皇という特異な存在を軸に国家体制をしつらえた日本で、その継受にはどのような問題を孕んでいたのか。近代における法と国家の定礎の課題、そしてそれに連なる主権の問題系を、ボタン、シュミット、フーコー、そしてルジャンドルの思想などを通して素描し、明治憲法の制定期におけるローレンツ・フォン・シュタインや井上毅ら日本の理論家たちの議論の要所を描き出す。西田幾多郎にとって国家とは何だったのか?
目次
序 国家あるいは法の正統性
第1章 主権という問題
第2章 「国家理由」という問題
第3章 西田幾多郎と明治国家
第4章 「絶対矛盾的自己同一」と国家
むすび
著者
嘉戸 一将(かど かずまさ)
1970年大阪府生まれ。東京大学法学部卒業、京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程中退、京都大学助手などを経て、現在、龍谷大学文学部准教授。
著書に『主権論史――ローマ法再発見から近代日本へ』(岩波書店、2019年)、『北一輝――国家と進化』(講談社、2009年、※2017年に講談社学術文庫)など。
訳書に、P・ルジャンドル『ドグマ人類学総説――西洋のドグマ的諸問題』(共訳、平凡社、2003年)など。