イメージの帝国/映画の終り
吉本光宏
ニューヨークを拠点に活動を続けてきた著者による日本語での初の単行本。現代ハリウッドの世界戦略を、彼らが製作しようとする映画作品の内容にも多分にかかわるであろう、資本主義・国家(アメリカ)・戦争・ナショナリズムの変貌する姿との内在的な関係として捉えなおす画期的な考察。作家論に偏りがちな映画批評の言説に新しい視点を導入し、その活性化を図る。
目次
00 現実/リアリティー――序にかえて
イメージの魔力
イーストウッドの「二」部作
反復、回復、スペクタクル
01 選択/自由――スペクタクル批判の困難さについて
ポストモダンと映画
「選ばれし映画」としての『マトリックス』
映画的表象としての「スペクタクル社会」
スペクタクルとしての映画
ポストモダン的映画のイデオロギー
スペクタクル批判の困難さ
02 戦争/ハリウッド――犠牲のPR
はじめに
「正しくない」戦争映画を「正しく」理解する
身体のリアリズム
リンカーン、あるいは債務感のネットワーク
戦争の表象、表象の戦争
03 イメージ/資本主義――ブロックバスターとはなにか
『ジョーズ』効果
撮影所システムからニュー・ハリウッド
ハリウッドとフォーディズム
ポスト・フォーディズム体制とブロックバスター
ハリウッド、そして国家/ネーション/資本
04 暴力/物語――ハリウッドとポスト9・11のアメリカ
はじめに
暴力の非物語化
名前のない都市
自己責
二重化する主体
SF映画とポスト核時代
内部と外部
著者
吉本 光宏(よしもと みつひろ)
1961年生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で修士号(M.A., テレビ・映画研究)、同大学サンディエゴ校で博士号(Ph.D., 比較文学)を取得。現在、ニューヨーク大学(NYU)東アジア学科准教授を経て、現在、早稲田大学国際教養学部教授、同大学院国際コミュニケーション研究科研究科長。主要著書に、Kurosawa: Film Studies and Japanese Cinema (Duke University Press,2000)、『抵抗の場へ――あらゆる境界を越えるために マサオ・ミヨシ自らを語る』(共著、洛北出版、2007年)、『陰謀のスペクタクル――〈覚醒〉をめぐる映画論的考察』(以文社、2012年)など。