明治国家の精神史的研究──〈明治の精神〉をめぐって
鈴木徳男、嘉戸一将 編
明治の精神史を、140年に亘る日本の近代化のプロセスとして、それがある極点に達した今日のグローバリゼーションの時代から再考を試みる論文集。漱石の『こころ』に描かれた〈明治の精神〉というキーワードを起点に、法制・徴兵・戯作・歌学の各方面から光を当てる。
目次
揺らぐ近代――序にかえて
「明治の精神」――その典拠と、漱石の認識(鳥井正晴)
1.『こころ』が語る、天皇崩御と乃木殉死
2.『こころ』が語る、「明治の精神」
3. 次世代の反応
4. 明治国家の「官費留学生」 ―政府の君に託したるは(鴎外)、 感銘を帯びて遠く海を渡れる主意(漱石)
5. 広田先生の「夢」の話 ―近代の大なる代償
「忠君」と「愛国」 ――明治憲法体制における「明治の精神」(嘉戸一将)
はじめに――明治憲法体制における忠誠の問題
1. 問題の所在
2. 忠誠観念の制度化という問題
3. 明治憲法体制と紐帯
結びに代えて
福沢諭吉における兵役の「平等」――徴兵論と兵役のがれの間(長谷川精一)
はじめに
1. 福沢諭吉の徴兵論
2. 福沢親子の「徴兵逃れ」
3. 兵役税の提案
4. 兵役業務と兵役税
5. 兵役業務の「崇高性」
結末の行方――梁明期明治戯作の位相(山本和明)
1. 転ぶ戯作者
2. 周縁の状況
3. 解き放たれた戯作
4. 貫通する稗官魂
5. 疲弊と困惑
6. 法綱、頭上に覆ふ
7. 彷徨ふ結末
8. 江戸戯作の復権
9. 戯作のゆくへ
10. 一つの夢想
近代歌学の出発 ――竹柏園と博文館(鈴木徳男)
はじめに―肯定的に価値づけられた明治
1. 明治10年代
2. 明治20年代
3. 日本歌学全書
4. 博文館
5. 竹柏園の業績
おわりに――和歌研究の現在
あとがき
編者
鈴木 徳男(すずき のりお)
1951年生まれ。相愛大学人文学部教授。兼人文科学研究所長。
主な業績:『続詞花和歌集の研究』和泉書院、『俊頼髄脳の研究』思文閣出版、『冷泉家時雨亭叢書第79巻 俊頼髄脳』朝日新聞社。
嘉戸 一将(かど かずまさ)
1970年生まれ。龍谷大学文学部歴史学科准教授。
主な業績:『主権論史――ローマ法再発見から近代日本へ』岩波書店、『西田幾多郎と国家への問い』以文社、「明治期における「行政」の概念――有賀長雄の場合」(『社会システム研究』第4号)、「正統性と〈理性〉――井上毅と法・行政の礎(1)(2)」(『日本文化環境論講座紀要』第3号、第4号)。