脱構成的叛乱──吉本隆明、中上健次、ジャ・ジャンクー
友常勉
私たちの時代の〈疲労〉と〈歓喜〉
私たち個々人の世界との〈異和〉は、いかにして〈抵抗〉となり〈叛乱〉となるのか? そして、民衆的な想像力の表現(=脱構成的叛乱)を、われわれはいかに感知し、再組織化しうるのか? 吉本隆明の〈表出論〉や中上健次の〈文学的企て〉、ジャ・ジャンクーの〈映画=政治的実践〉の試行をとおして、その条件を精緻に追及した、民衆思想/芸術論の新たなる展開!
目次
序文
Ⅰ 吉本隆明の表出=抵抗論
表出と抵抗――吉本隆明〈表出〉論についての省察
〈意志〉の思考―― 一九七八年、ミシェル・フーコーと吉本隆明の対話
『論証と喩』――反転=革命の弁証法
Ⅱ.中上健次と部落問題
中上健次と戦後部落問題
「路地」とポルノグラフィの生理学的政治
Ⅲ.アジアの民衆表象
アジア全体に現れている疲労という感覚――賈樟柯(ジャ・ジャンクー)『長江哀歌』の映像言語
震災経験の〈拡張〉に向けて
街道の悪徒たち――『国道20号線』の空間論と習俗論
Ⅳ.農民論
ある想念の系譜――鹿島開発と柳町光男『さらば愛しき大地』
1930年代農村再編とリアリズム論争――久保栄と伊藤貞助の作品を中心に
初出一覧
あとがき
著者
友常 勉(ともつね つとむ)
1964年生まれ。日本思想史。厦門大学外文学院講師、東京外国語大学非常勤講師などを経て、現在、東京外国語大学国際日本学研究院教授。
著書に、『始原と反復――本居宣長における言葉という問題』(三元社、2007年)、『夢と爆弾――サバルタンの表現と闘争』(航思社、2019年)など。
訳書に、李子雲・陳恵芬・成平『チャイナ・ガールの1世紀―女性たちの写真が語るもうひとつの中国史』(葉柳青と共訳、三元社)など。