「近代の超克」と京都学派──近代性・帝国・普遍性
酒井直樹、磯前順一 編
1942年の座談会「近代の超克」をめぐる国際シンポジウム
戦中に行われた座談会「近代の超克」が提起した問題を、パックス・アメリカーナが揺らぎ始め、国際秩序の再編期のいま、近代性、帝国、普遍性など優れて現代的な視点から歴史的な再検討を試みる。ことに、「近代の超克」の座談会には参加しなかった三木清も含め、西田幾多郎から田邊元を経て、第三世代の三木や西谷啓治へ繋がっていく京都学派は、特に新カント派、マルクス、ヘーゲル、フッサール、ハイデッガーを丹念に読破し、西洋近代思想の受容に多大な成果を上げると同時に日本特有の文化という言説を創出していった。その壮大な経緯の批判的な検討。
目次
序 パックス・アメリカーナの下での京都学派の哲学
1 「近代の超克」と京都学派
・「近代の超克」と京都学派――近代性・帝国・普遍性
・座談会「近代の超克」の思想喪失――近代とその超克をめぐる対立
・西谷啓治と近代の超克(1940~1945)
2 三木清と帝国の哲学――普遍性をめぐって
・東亜共同体論と普遍性をめぐって――主体的技術論序説
・「近代の超克」と「中国革命」――戦後日本思想史における二つのモメント
3 「近代の超克」と「世界史的立場と日本」――帝国の役割
・「近代の超克」思想と「大東亜共栄圏」構想をめぐって
・同化あるいは超克――植民地挑戦における近代超克論
4 総合研究:日本における西洋近代の経験
・近代との格闘――ジェイムズ・カズンズと日本・インド・植民地の文化
・西洋の針路の喪失/東漸の終焉と脱ヨーロッパ化
・「西側」近代性に対する抵抗と、「東洋的」沈潜への誘惑と
あとがき――討議の後で
著者
酒井 直樹(さかい なおき)
1946年生まれ。シカゴ大学人文学部極東言語研究学科博士課程修了。現在,コーネル大学教授。著書に,『日本思想という問題――翻訳と主体』(岩波書店、1997年)、『過去の声――18世紀日本の言説における言語の地位』(2002年)、『希望と憲法――日本国憲法の発話主体と応答』(2008年、共に以文社)など多数。
磯前 順一(いそまえ じゅんいち)
1961年生まれ。国際日本文化研究センター教授。東京大学大学院博士課程中退。著書に、『昭和・平成精神史――「終わらない戦後」と「幸せな日本人」』(講談社選書メチエ、2019年)、『死者たちのざわめき 被災地信仰論』(河出書房新社、2015年)、『記紀神話と考古学――歴史的始原へのノスタルジア』(角川学芸出版,2009年)、『喪失とノスタルジア――近代日本の余白へ』(みすず書房,2007年)、『近代日本の宗教言説とその系譜――宗教・国家・神道』(岩波書店,2003年)など多数。