空間のために──遍在化するスラム的世界のなかで
篠原雅武
空間が荒廃している
世界を席巻する新自由主義政策による負の遺産として、世界中で「スラム」と呼ばれる場所が急増している。日本でも近年、処々にスラム化した空間が予兆のように現れ始めていたが、半年前の大震災により、この問いはより過酷かつ切迫したものとして我々の目の前に突き付けられた。今後、放射性物質の大規模な漏洩の余波のなか、よりアクチュアリティを増すであろう「われわれの生活空間をいかに取り戻すのか」という難問に、気鋭の若手理論家が挑む。
空間の〈均質化〉の時代が終わり、空間の〈荒廃化〉の時代に差し掛かった今日、私たちはいかにして自らの生活空間を取り戻すことができるのか?
目次
はじめに
序章 生活世界の荒廃
第1章 空間と領土性
第2章 空間の質感
第3章 再領土化の諸問題
第4章 流動と停止
第5章 壁
第6章 虚構と想像
第7章 来るべきスラム化に備えて
第8章 空間的想像力の奪還
終章 黄金時代に秘められた地獄
あとがき
著者
篠原 雅武(しのはら まさたけ)
1975年生。社会哲学、環境学専攻。1999年京都大学総合人間学部卒業。2007年京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。
著書:『空間のために 遍在化するスラム的世界のなかで』(以文社、2011年)
『全-生活論 転形期の公共空間』(以文社、2012年)
『複数性のエコロジー 人間ならざるものの環境哲学』(以文社、2016年)
『人新世の哲学』(人文書院、2018年)など。