脱 帝国──方法としてのアジア
陳光興(丸川哲史 訳)
アジアを代表する知識人による新たな政治的方法論とその可能性!
9.11以後のアメリカの新世界戦略、中国の台頭など、グローバリゼーションの新展開をふまえ、アジアにおけるカルチュラルスタディーズの第一人者が、欧米理論を応用するのではなく、アジアの国同士の比較・検証によって新たな方法論と政治の可能性を押し開く。「冷戦」によって阻まれた「脱植民地化」を、アジアの国々のなかの〈内なる帝国=アメリカ〉を問い直すことによって、真の「脱帝国」へとつなげる画期的理論=実践の書。
日本、中国、韓国、シンガポール、そしてインドへ。台湾の大学教授である著者・陳光興氏は、アジアじゅうの知識人を結ぶ学術雑誌・運動を組織し、英国カルチュラルスタディーズの創始者スチュアート・ホールから、「カルチュラルスタディーズを決定的に変容させ深化させた」と絶賛されている。竹内好「方法としてのアジア」を解読する最新論文を日本語版独自収録。
目次
日本語版へのまえがき 蠢動する植民地の亡霊
序章 グローバル化と脱帝国
領域
立論
歴史叙述
推論
方法
Ⅰ 脱帝国 51クラブ及び帝国主義を前提とする民主運動
ⅰ 問題意識
ⅱ 51クラブを読む
ⅲ 如何にアメリカニズムを理解するのか?
ⅳ アメリカニズムと国民主義の相補性
ⅴ 9・11後のアメリカニズム
ⅵ 民主運動と帝国主義
ⅶ 脱米とアジア独立の問題
ⅷ グローバル民主運動の前提であり動力たる脱帝国
まとめ:脱帝国
Ⅱ アジアを方法とする 「脱亜入米」を超える知識状況
ⅰ 問題意識:「脱亜入米」
ⅱ 「西洋」問題
ⅲ 参照対象の転換:パルタ・チャタジーとの対話――民間と政治社会
ⅳ アジアを方法とする:溝口雄三との対話
ⅴ 目下の知識状況を乗り越え、東アジアの批判的連帯へ
補論 竹内好1960年「方法としてのアジア」を読む 目下の知識構造の省察として
終章 中華帝国ヒエラルキー下の漢人による人種差別
訳者解説
著者
陳 光興(ちぇん・ぐぁんしん)
1957 年生まれ。台湾の交通大学教授。社会文化研究所に所属、アジア太平洋/文化研究室の責任者。かつて(台湾)新竹の清華大学にも20 年間勤めた。その他、シンガポール大学顧問客員研究員,韓国延世大学と北京清華大学の客員研究員、上海大学の客員教授などに任ぜられる。また『台湾社会研究季刊』のメンバーであり,雑誌Inter-Asia Cultural Studies: Movement の共同編集委員。ここ数年は、二つのプロジェクト「西の天と東の土――インド中国社会思想対話」と「アジア現代思想計画」にも携わっている。
著書に『メディア/文化批判の民主主義逃走路線』(台北,1992)、『帝国の眼差し』(ソウル、韓国語版、2003)、『脱帝国――方法としてのアジア』(台北、中国語版、2006)、Asia as Method: Towards De-Imperialization (Duke University Press, 2010), 共同編著にStuart Hall: Critical Dialogues in Cultural Studies (Routledge, 1996), Trajectories: Inter-Asia Cultural Studies (Routledge, 1998), Inter-Asia Cultural Studies Reader (Routledge, 2007),『Partha Chatterjee講座: 政治社会の発見――国家暴力,モダニティとポスト植民地民主』(台北,2000),『異議――台湾思想読本』(台北、2008)、『白楽晴――分断体制・民族文学』(台北、2010)、『陳映真: 思想と文学』(台北、2010)、『中国革命再考――溝口雄三の歴史方法』(台北、2010)など。
訳者
丸川 哲史(まるかわ てつし)
1963年、和歌山県生まれ。一橋大学大学院言語社会研究科博士課程単位取得退学。現在、明治大学政治経済学部教授(東アジア文化論・台湾文学)。著書に『魯迅と毛沢東』(以文社)、『台湾、ポストコロニアルの身体』『帝国の亡霊』(以上、青土社)、『リージョナリズム』(岩波書店)、『冷戦文化論』(双風舎)、『日中一〇〇年史』(光文社)、『台湾における脱植民地化と祖国化』(明石書店)、『台湾ナショナリズム』(講談社)、『竹内好』(河出書房新社)、『ポスト〈改革開放〉の中国』(作品社)、共訳書に『ジャ・ジャンクー「映画」「時代」「中国」を語る』(以文社)など。