陰謀のスペクタクル──〈覚醒〉をめぐる映画論的考察
吉本光宏
なぜ、陰謀論はなくならないのか?
世界的な新自由主義政策の席巻のもと、その裏面として多くの陰謀論が蔓延る現在、陰謀論的な言説、そして陰謀というテーマを変奏する映画作品の限界を(一方でそれらが開示しようとすることの可能性とともに)、原理的=映画論的に考察し、さまざまな形に姿を変えながら広まる「シニシズムの物語」の戦略を徹底的に読み砕く。映画・アメリカ・民主主義・市場への根源的分析から「闘争の時代」の幕開けを告げる、新しい時代の批評の誕生!
目次
1 陰謀とイメージ
陰謀論とはなにか
イメージの陰謀
冷戦と陰謀
二元論の崩壊
陰謀と市場
市場の不可視性
冷戦から新自由主義へ――陰謀論映画は何を隠蔽するのか
陰謀論と覚醒
)2 陰謀装置としての映画
催眠術と覚醒体験
映画と覚醒――アメリカン・ドリームの終焉
陰謀と不気味なもの
陰謀の空間
監視空間と主体
反復と覚醒
覚醒という事件と映画の両義性
3 陰謀・メディア・民主主義
自由・民主主義の矛盾
フランク・キャプラと陰謀論映画
議会制民主主義の限界
金融危機とアメリカの狂気
暗い時代
仮面の告白
「冷笑」でもなく「熱狂」でもなく
あとがきにかえて――「われわれ」はどこへ向かうのか
著者
吉本 光宏(よしもと みつひろ)
1961年生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で修士号(M.A., テレビ・映画研究)、同大学サンディエゴ校で博士号(Ph.D., 比較文学)を取得。ニューヨーク大学(NYU)東アジア学科准教授を経て、現在、早稲田大学国際教養学部教授、同大学院国際コミュニケーション研究科研究科長。主要著書に、Kurosawa: Film Studies and Japanese Cinema (Duke University Press,2000)、『抵抗の場へ――あらゆる境界を越えるために マサオ・ミヨシ自らを語る』(共著、洛北出版、2007年)、『イメージの帝国/映画の終り』(以文社、2007年)など。