3・12の思想
矢部史郎
3・11ではない、3・12の話をしよう
前著『原子力都市』で、福島第一原子力発電所爆発以降の世界を予見していた著者が放つ、待望の語り下ろし。環境、社会、人間精神を見据えた、真に迫る提言。混沌とした状況下における「百家争鳴」時代を生き抜くために。
2011年3月12日は、前日(3・11)の大震災の影響で福島第一原子力発電所の最初の大爆発が起きた日である。つまり、災害によるものではない公害による被害が始まった日付だ。「3・11」という日付による、未曾有の出来事への記憶が抹消せんとするものを鋭く指摘する。
目次
はじめに
Ⅰ 3・12後の世界
「3・12」公害事件
原子力国家の性格
東京の未来
子どもと労働者への「無関心」
国内難民と母親たち
「外国人」としての避難民
Ⅱ 放射能測定という運動
放射能計測運動の基礎
検出限界の問題
セシウム134を検出すること
セシウムの作物移行を低減させることの問題
国が発表する空間線量の問題
「サンプル」調査の限界
誰が危険にさらされているか
オートポイエーシス的運動
Ⅲ 3・12の思想
原子力資本主義、そして〈帝国〉
原子力のある社会
エコロジーとはなにか
放射能被害と新たなる集団性
世界の原子力体制
科学と魔術
今後、世界といかに接していくか
著者
矢部 史郎(やぶ しろう)
1971年生まれ。90年代からさまざまな名義で文章を発表し、社会運動の新たな思潮を形成した一人。高校を退学後、とび職、工員、書店員、バー テンなど職を転々としながら、独自の視点から鋭利な社会批評を展開。人文・社会科学の分野でも異彩を放つ在野の思想家。
著書に、『原子力都市』(2010年、以文社)、『愛と暴力の現代思想』(2006年、青土社、山の手緑との共著)、『無産大衆神髄』 (2001年、河出書房新社、山の手緑との共著)など。