同一性の謎──知ることと主体の闇
ピエール・ルジャンドル(橋本一径 訳)
私はなぜ私なのか。人間自身の未知なる秘密を出発点に、科学や経済を陰で支える〈法〉のメカニズムを明るみに出し、西洋的制度の核心に迫る。現代思想の要である「ドグマ人類学」の創始者が高校生に向けて語る、格好の入門書。
目次
はじめに 意欲ある若者たちへ……
向こう傷 科学と無知について 若き学生たちに向けた講演
Ⅰ 第一の方向
鍵を握る問い
近代的な科学システムの形成において、片隅に追いやられたのは何か?
Ⅱ 第二の方向
科学が自分のものにできなかったものの方へ
主体についての知
応用編
Ⅰ 自らを認識する 文明の指標に関する西洋的な経験についての注記
Ⅱ ユダヤ=ローマ=キリスト教のシナリオからの派生物 国家の概念
Ⅲ 理論的な広がり 社会的モンタージュの言語的構造
イコノグラフィ
自らの保守者たる西洋 証左となる三つの図版
著者
ピエール・ルジャンドル(Pierre Legendre)
1930年、ノルマンディー生まれ。法制史家・精神分析家。1957年パリ大学法学部で博士号を取得。民間企業、ついで国連の派遣職員としてアフリカ諸国で活動したのち、リール大学、パリ第10大学を経て、パリ第一大学教授と高等研究実習院研究主任を96年まで兼任。分析家としてはラカン派に属し、同派の解散以降はフリーランスとなる。中世法ならびにフランス近代行政史についての多数の研究を発表したのち、とくに70年代以降、主体形成と規範性の関係を問いながら、西洋的制度世界の特異性と産業社会におけるその帰結を考察する作業をつづけている。既訳書に『ロルティ伍長の犯罪』(西谷修訳、人文書院、1998年)、『ドグマ人類学総説』(西谷修監訳、平凡社、2003年)、『西洋が西洋について見ないでいること』(森元庸介訳、以文社、2000年)、『真理の帝国』(西谷修・橋本一径訳、人文書院、2006年)、『ルジャンドルとの対話』(森元庸介訳、2010年)、『西洋をエンジン・テストする』(森元庸介訳、以文社、2012年)。
橋本 一径(はしもと かずみち)
1974年、東京都生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。早稲田大学文学学術院准教授。著書に『指紋論――心霊主義から生体認証まで』(青土社、2010年)、訳書にジョルジュ・ディディ=ユベルマン『イメージ、それでもなお』(平凡社、2006年)などがある。