フロイトの情熱──精神分析運動と芸術

比嘉徹徳　

精神分析の初期衝動、そして芸術の〈真理〉とはなにか？

精神分析、そして精神分析家。１００年前、フロイトの「輝かしい孤立」から生まれ、「それまで世界に存在しなかった」学問と職業。その「その一身において精神分析」であったフロイトの闘い、その紆余曲折のすべて。

鮮烈なる知性による渾身のデビュー作

目次

序
・情熱の理路
・「フロイトの体験」の反復としての精神分析

第１章　運動主体の構築
・精神分析運動の原光景
・権威の伝達
・フロイトの自己分析
・権威の寓話
・ゲリラ戦
・フロイトの大義

第２章　精神分析の制度化とその不可能性
・転移の価値づけ
・職業としての精神分析
・制度化の不可能性

第３章　オイディプスと夢の舞台
・無媒介的表象のアポリア――『悲劇の誕生』という模範
・願望充足の位階秩序
・夢作業と喩
・「夢作業は考えない」
・仮託と模倣――遊びとしての願望充足
・オイディプスの欲動

第４章　成功したパラノイア
・フロイトのシュレーバー症例解釈
・パラノイアとオリジナリティの不安
・パラノイアの嫌疑
・「分析的素質」――細部から非一貫性へ
・写真のパラダイム？

第５章　「歴史小説」における真理
・「歴史小説」
・「モーセという男、歴史小説」
・「歴史的真理」の構成
・ネットワーク
・欲動断念の陶酔

あとがき

著者

比嘉 徹徳（ひが てつのり）
一橋大学大学院言語社会研究科特別研究員。専攻：精神分析、思想史。
1973年沖縄県那覇市生まれ。法政大学社会学部卒業。
一橋大学大学院言語社会研究科博士課程修了。博士（学術）。
著作：『政治経済学の政治哲学的復権』（共著、法政大学出版局、2011年）
訳書：C.ドゥズィーナス、S.ジジェク編著『共産主義の理念』（共訳、水声社、2012年）ほか。