わが心のチェーホフ
佐藤清郎
農奴の孫、医師・作家のチェーホフは、すべてを離れて見る目を持っていた。そこから笑いと哀れみ、優しさと厳しさが生まれる。名著『チェーホフの生涯』から半世紀、94歳の著者が書き溜めたエッセ風チェーホフ論。
「チェーホフは、「最も平凡な日常生活」を描いて、人間の、この世の真実に迫った作家です。彼が求めた公正、真実、自由、美(清さと言うべきか)は、時代がどう変わっても、人間が人間らしくありつづけるかぎり、人間の目標たるを失わないはずです。チェーホフは、私にとって、そういう作家でありつづけました。(「あとがき」より)
目次
チェーホフの孤独
チェホンテからチェーホフへ
チェーホフの醒めた眼
「退屈な話」という題名訳
『賭け』の広がり――生き方の選択
チェーホフとストア哲学――『六号室』の世界
「幸福なんてない」(『手帖』)
『黒衣の僧』――チェーホフとドストエフスキー
チェーホフと『伝道の書』
『三人姉妹』のテーマ――チェーホフの本音
「どっちだって同じさ」――加藤周一の観劇評
『桜の園』の時代性と永遠性
再び『桜の園』について――カターエフ説再考
「自然法爾」(親鸞)と「自然法則」(チェーホフ)
横顔のチェーホフ
チェーホフ・その死
*
チェーホフ小伝――生涯とその時代
チェーホフと神西清
あとがき
著者
佐藤 清郎(さとう せいろう)
1920年生まれ。哈爾(ハルビン)学院、大同学院卒。大阪大学教授、早稲田大学客員教授などを歴任。
主著
『チェーホフの生涯』(筑摩書房、1966年)
『若きゴーリキー』(筑摩書房、1968年)
『チェーホフの文学』(筑摩書房、1972年)
『ゴーリキーの生涯』(筑摩書房、1973年)
『ツルゲーネフの生涯』(筑摩書房、1977年)
『チェーホフ芸術の世界』(筑摩書房、1980年)
『チェーホフ劇の世界』(筑摩書房、1980年)
『チェーホフへの旅』(筑摩書房、1987年)
『孤愁の文人』(ブーニン)(岩波ブックセンター、1990年)
『観る者と求める者』(武蔵野書房、1993年)
『二葉亭四迷研究』(有精堂、1994年)
『トルストイ 心の旅路』(春秋社、2001年)