民主主義の非西洋起源について──「あいだ」の空間の民主主義
デヴィッド・グレーバー(片岡大右 訳)
豊穣なる人類学的・歴史的知見から「民主主義の歴史」の盲点を鮮やかに突く!
『ブルシットジョブ』(岩波書店より近刊)そして『負債論』(弊社刊)で話題沸騰中の人類学者D・グレーバーによる、通念を根底から覆す政治哲学。すなわち、「民主主義はアテネで発明されたのではない」──
この価値転覆的な認識をもとに、私たちはいかに「民主主義」と出会い直しその創造をふたたび手にするのか。
アラン・カイエによる「フランス語版のためのまえがき」および「付録」として恰好のグレーバー入門となる著者本人によるエッセイ(「惜しみなく与えよ」)を収録した、フランス語版をベースに編まれた日本独自編集版。
「アナキズム的な歴史のヴィジョン、歴史の政治哲学に捧げられた、ピエール・クラストルの著作以来最も重要な成果であり、グレーバー最良の仕事」──アラン・カイエ(「フランス語版のためのまえがき」より)
「「出羽守」の嘆きと「日本スゴイ」の大合唱が不毛な対立を繰り広げているように見える私たちの列島の現在においても、決して他人事ではない着想に満ちている」──片岡大右(「訳者あとがき」 より)
目次
序 論
第1章 「西洋的伝統」という概念の一貫性のなさについて
補足的覚え書き──西洋的眼差しの欺瞞性について
世界システム論を再構成する
第2章 民主主義はアテネで発明されたのではない
第3章 「民主主義的理想」の発生について
第4章 相互になされる回収
「影響論争」──アメリカ民主主義とイロコイ諸族
終わりなき再創設の営みとしての伝統
アフリカのフェティシズムと社会契約の理念
中国とヨーロッパ国民国家
結 論 国家の危機
民主主義と国家の不可能な結合
フランス語版のためのまえがき/アラン・カイエ
【付 録】 惜しみなく与えよ──新しいモース派の台頭/D・グレーバー
「あいだ」の空間と水平性──訳者あとがき/片岡大右
書 誌
著者
デヴィッド・グレーバー(David Graeber)
1961 年、ニューヨーク生まれ。文化人類学者・アクティヴィスト。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス大学人類学教授。
訳書に、
『アナーキスト人類学のための断章』(2006 年)、『負債論──貨幣と暴力の5000 年』(2016 年、共に以文社)ほか。
日本語のみで出版されたインタビュー集として『資本主義後の世界のために──新しいアナーキズムの視座』(以文社、2009 年)がある。
著書に、
Bullshit Jobs: The Rise of Pointless Work, and What We Can Do About It(Penguin, 2019、岩波書店より近刊)。
Toward an Anthropological Theory of Value: The False Coin of Our Own Dreams(Palgrave, 2001、以文社より近刊)。
Lost People: Magic and the Legacy of Slavery in Madagascar (Indiana University Press, 2007).
Direct Action: An Ethnography (AK Press, 2007). ほか多数。
マーシャル・サーリンズとの共著に、On Kings (HAU, 2017) がある(以文社より刊行予定)。
訳者
片岡大右(かたおか だいすけ)
1974 年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。批評家、社会思想史・フランス文学。
著書に『隠遁者、野生人、蛮人──反文明的形象の系譜と近代』(知泉書館、2012 年)。『共和国か宗教か、それとも』(共著、白水社、2015 年)。
訳書にF・ドゥノール、A・シュワルツ『欧州統合と新自由主義──社会的ヨーロッパの行方』(共訳、論創社、2012 年)。P・ベニシュー『作家の聖別──フランス・ロマン主義1』(共訳、水声社、2015 年)など。