惑星都市理論
平田周、仙波希望 編
21世紀の都市研究のために
コロナウイルス感染症の世界的な流行で、人々の移動が大幅に制限されるなかにおいても、まるで何も起きていないかのように駆動し続ける「世界経済」。それはすでに「惑星都市」が存在していることの証でもある。本書は、「惑星都市理論」(=プラネタリー・アーバニゼーション研究)という近年世界的に注目されている分析枠組みを用いて、「インフラ」「ロジスティクス」「リスケーリング」といった「惑星都市」を成り立たせる諸要素を考察しながら、「ポストコロニアル都市理論」「関係論的転回」「都市への権利」「自然の生産」など、欧米の都市理論を賑わせている対抗的ロジックの可能性と限界を見定め、その先を模索しようと試みる。「惑星都市」を私たちのものにするために。
【目次】
序
「プラネタリー・アーバニゼーション研究を開く」(平田 周)
第1部 スケール/ヒンターランド
「都市のリスケーリングと排除/包摂の論理――グラン・パリ大都市圏という選択は何を意味するのか?」(荒又美陽)
「ヒンターランドの都市化?」(ニール・ブレナー/渡邉隼 訳)
「都市への権利・非都市への回路――広範囲の都市化と非都市的なものの概念」(渡邊 隼)
第2部 インフラストラクチャー/ロジスティクス
「惑星都市化、インフラストラクチャー、ロジスティクスをめぐる11の地理的断章――逸脱と抗争に横切られる「まだら状」の大地」(北川眞也)
「海の都市計画――ロジスティクスとインフラをめぐって」(原口 剛)
第3部 ポストコロニアル都市理論/関係論的転回
「ポストコロニアル都市理論は可能か」(仙波希望)
「千のCEO――人文地理学と経営戦略論における関係的思考、プロセス的空間、ドゥルーズ存在論」(キー・マクファーレン/林 凌訳)
「出来事としての都市を考えるために――都市研究における「関係的思考」の理論的系譜とその問題点」(林 凌)
第4部 抽象空間/都市への権利/自然の生産
「グレゴリーのルフェーヴル『空間の生産』論」(大城直樹)
「都市への権利、ある思想の運命」(平田 周)
「惑星都市理論における「自然の生産」の位相」(馬渡玲欧)
あとがきにかえて
「それでも惑星都市を彷徨するために」(仙波希望)
文献
主要用語索引
主要人名索引
編者
平田 周(ひらた しゅう)
1981 年生まれ.思想史.パリ第8 大学博士課程修了.博士(哲学).日本学術振興会特別研究員(PD)を経て,南山大学外国語学部フランス学科准教授.
主な論文に「ニコス・プーランザスとアンリ・ルフェーヴル── 1970 年代フランスの国家論の回顧と展望」(『社会思想史研究』第37 号,2013),「なぜ空間の生産がいまだに問題なのか」(『現代思想』第45 巻18 号,青土社,2017),「広範囲の都市化を通じたウイルスの伝播」(『現代思想』第48 巻第7 号,青土社,2020)など.共訳にグレゴワール・シャマユー『人間狩り』(明石書店,近刊)など.
仙波希望(せんば のぞむ)
1987 年生まれ.都市研究,カルチュラル・スタディーズ.博士(学術).広島文教大学人間科学部専任講師.
主な著書に『忘却の記憶』(共著,月曜社,2018)など.主な論文に「「平和都市」の「原爆スラム」──戦後広島復興期における相生通りの生成と消滅に着目して」(『日本都市社会学会年報』第34 号,2016),「日々の喪失,平和の喧伝──相生通りと動員される「平和都市」」(『現代思想』第44 巻15 号,青土社,2016)など.